本のある日記

本のある日記

日記・その時にあてはまる本・ことば・音楽。

可愛くなったね

年下の女の子からそう言われたので、今日はもういいです。まるです。

淡々と仕事をする。3月までに色々終わるかなあ。
職場はしばらく変わりたくない。変わっても大変だし、変わらなくても大変そう。
仕事していると、合間で遊びに来る人がいる。
誰かと段々仲良くなっていくのがわかるときって、ああー仲良くなってるなーって思うんだけどうまく止められない。大丈夫かな?って思うときがある。急に近づくと怖い。のに止まらない。

夜はうたた寝していたら、携帯電話が振動して目が覚める。そのあと電話する。
いつもと声が違うねと言われる。寝起きだからかなあと答えたけど、どうなのかな。違う人かもしれないねと言うと、喋り方は本人だよと言われた。


〈長く一緒にいたせいで、離れ難くなりながら別れた。〉

山崎ナオコーラ人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
この前、古本屋さんで買っていた本。
おととしの夏に映画を観ていた。
美術系の専門学生が、講師のお姉さんに翻弄される話。主人公はわりと真面目に相手のことが好きなんだけど、お姉さんの気のままに振り回されるので、全然順調にはいかない。ぬまぬましている。
映画版のほうは随分どろっとしていて、絶望的な感じだったけど、小説はもう少しやわらかい雰囲気というか、救いのあるあたたかさがある。(絶望的っちゃ絶望的なのだが)

この映画を観たとき、楽しかったけど、どうしてかものすごく寂しかった。いまも思い出すとちょっとヒリヒリする。でも大切な思い出。

だんだん怖くなってくる

9日
練習をして……真昼に小さなギャラリーに絵を見に行く。私しかいない。
海の絵と、光の絵を見る。ガラスの中に絵がとじこめられていた。
絵を見るのはいいな〜と思う。心がリフレッシュする。ラフ・シモンズも、アートを見るとリラックスして霊感も得られると言ってたけど真理だと思う。
雑貨屋さんと本屋さんにも行った。他にお客さんはいなくて、新年のあいさつをした。
コースターになるものが欲しくて、かわいいトレイを買う。女は三十路からです、と言われる。

10日
練習(見るだけ)。今日は怒らない。練習に行き過ぎだと思う。今週、4日目。だから見るだけにして、さぼってる。もう少しセーブしたい。
一件、電話をする。なんだかうまく話せない。帰ってきてからも、気持ちがのらないまま時間が過ぎていく。とても長い時間お風呂に浸かる。
だんだん、いろいろなことがちょっと怖くなってくる。うまく行かないような不安が今日はぽこぽこ出てくる。
せめてコロナが無ければなあと思ってしまう。今日は駄目な日。


LOOP

LOOP

  • SIRUP
  • R&B/ソウル
  • ¥255
このごろ聴いている。「彼女の小指のネイルだけにあるアートの意味を考えてしまう」という歌詞が好き。


ダ・ヴィンチ 2021年2月号/特集 島本理生の祈り』

島本理生さんの全作品紹介とロングインタビューが載っている。全部は読んでいないけど、私が好きなのは『シルエット』『生まれる森』『リトル・バイ・リトル』『七緒のために』『あられもない祈り』『夏の裁断』のあたり。
佐藤友哉と書いてた「消え残る」も好きだった。
彼女の物語にはいつも傷がある。あと、雨。
そういう意味では、映画の『ナラタージュ』の雰囲気はとても良かったと思う。
島本さん、まだ若いんだなあとしみじみ思う。
初めて知ったきっかけは、雑誌で嵐のニノが『リトル・バイ・リトル』を紹介してたのを見たときだと思う。嵐がブレイクするよりも、ずっとずっと前の話。

青いくまの名前はうみ

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5日
練習はじめ。

6日
練習(見るだけ)。新年そうそう怒る。
みそじは怒らないでいこう!という決意はどこへ行ったのか。私だって怒りたくないよ。
そして仕事はじめ。

7日
きのうの日記のとおり。すごくさむい。

8日
とてもさむい。
夜にこっそり、ぬいぐるみの展示をみにいく。小さなギャラリーでやっている。水色のくまのぬいぐるみを買う。いぬかと思ったけどくまのようだ。
値札に貼られていたので、剥がされてしまってわからないけど、「うみ」という名前がつけられていた気がする。
きれいな水色。浅い海の色。
会場にいた女の子(前に一緒にごはんを食べたことがある)と話す。またいろいろ話したい。

近くの本屋さんに寄る。伊藤亜紗『手の倫理』を買う。本屋さんはじめ。
なぜ『手の倫理』が欲しいのか聞かれる。人間の手が好きだから。手に欲望と誘惑を感じるから。

その後、さらに近くの本屋さん2の前を通ると、ちょうど店主さんが出てきて新年のあいさつをする。
「どうぞ」とドアをあけてくれる。
実は年始に、自分のあるところを変えたのだけど、なんと店主さんがそこに気づいてくれる。あなたで二人目!気づかないと思う人ほど気づいてくれる。

ぬいぐるみと手の倫理でお金が飛んでしまい、お財布にあと600円しかない。
パーキング代で200円減るとして残り400円。そんなときに限って欲しいなと思う本が600円だったり700円だったりする。
それを話すと、「かつかつやな…」と店主さんがこぼす。この人の、ぽろりと落ちてくるこういうフレーズ、味があっていい感じだと思う。
『オリーブの罠』を買った。このオリーブは、雑誌のOlive。古本なので350円。

オリーブの罠 (講談社現代新書)

オリーブの罠 (講談社現代新書)

帰りしに本屋の入り口で本を眺めていると、ギャラリーにいた女の子が通りがかって手を振ってくれた。

ペーパートークの話もした。文章書こう。つくろう作品。

具象化されない言葉

仲のいい人とふたりで話していたとき、ふいにその感情はやってきた。
「なんか突然、怖くなるときないですか?」
「何に?」
「わからない。一緒にいることが怖い。原因が相手にあるわけじゃなくて」
「沈黙が怖い?」
「違います」
私のよくわからない話を終わらせずに聞いてくれるその人は、気になるなあと言いながらこう聞いてきた。
「それは、具象化できないこと?」
たぶんその《具象化できない》にはふたつの意味があって、うまく言葉にあらわせないこと。もしくは、言葉にはしないほうがいいこと。
「できます」
「じゃあ、何?」
「……」
「困ってるね」
「……」
そのとき、私たちはある程度高さのある場所にいて、近くに池が見えていた。
私はひとつ思ったことがあったけど、それを口にしなかった。かわりにこう話した。
「大事だなと思う人と一緒にいるとき、ふいに怖くなります。楽しいな、とかいま幸せだな、と思ったとき」
「それは褒められなれてない子が、褒められると戸惑うみたいな感じ?幸せに慣れてないような」
「楽しいとか、嬉しいことはいつも少し遠くにあってほしくて、それをいざ体験してしまうと、次がないような気がして怖いんです」

その人がなんて答えたかは覚えていない。
簡潔に「楽しいからこの時間が終わるのがちょっと寂しくなった」と言えばよかった。でも、厳密には違うような気もする。

だって、本当はそのとき、私が言おうとしていたのはそんな言葉ではなかった。深い池を見て、その人を見て、私はこう言いたかった。
「一緒にここに落ちませんか?」
一緒に死んでほしいみたいなことを、私は言おうとして、でも言ったら迷惑かけるし、すべて壊れるなと思って言わなかった。本気じゃないけど、冗談でもなくて、自分でも判断ができない何かがあった。

私やばいでしょう。すごく嫌だ。
こういうのを2021は無くしていきたい。


仕事は始まったけど、いろんな人が話をしにきてくれて、仕事にならないまま終わっていく感じがある。
みんながどうして私のところへ来るのか、真相はわからないけど、何か持て余した時間や言葉や感情があるんだろうなとは思う。

「前に(私と)一緒に行ったパンケーキ屋さんがあれから夢に出てきました」と、年下の女の人が教えてくれた。お互いままならないなという話をして、もやもやを打ち明けあった。

また別の男の人は、今日は七草粥をつくると教えてくれた。もらう年賀状の数が激減したんですよーと言うと、書いてあげますよとも言ってくれた。(うれしかったけど断った)

誰かにとっての、ときどき逃げられる存在になりたい。そうなれていたら嬉しい。

私も今日は、甘えられる人にいろいろ打ち明けた。つらいと思っていたことでも、言葉にすると自分が悪いと自覚する点はいくつもあって、それがつらいんだけどそれをちゃんと見つめて繰り返さないようにしないといけないんだろうなと思った。



〈森に落ちていくとき、突き刺さることしか考えられなくて針葉樹が刃物に見えた。だれかに、死について気安く話してはならないよと習ったから、いつまでも死について考えられる権利が得られない(死ぬまで)。〉

最果タヒ『空が分裂する』収録「永遠」より引用)

空が分裂する (新潮文庫nex)

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死じゃない言葉で、私の怖いことや、好きな人といちばん好きな瞬間に一緒に壊れたいと思う感情をあらわしたい。まだその言葉を見つけられない。

オレンジじゃない、青。

1日
メンヘラなので元旦の夜(22時とか)にひとりで海辺を歩く。

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意外と誰もいない。
寒さ、波音、犯罪の気配など、色々な意味で死を感じて怯える。死を怖がるのは健全かも。
ひとつ思いついたことがあって、今度それを文章にしてみたい。そう思ったところで帰る。
ハンマーで人の頭を叩く夢を見た。

2日
とてもここには書けない夢を見る。こんな初夢で良いはずない。でも書けない。
年末に髪を切りに行ったら、なぜかあんもちを頂いた(うれしかった)ので、それを使ってお雑煮を作る。
何もしたくなくて、足に根っこが生えてしまう。部屋の片付けをしながらドキュメンタリー映画を観る。


フレデリック・チェン監督『ディオールと私』

ディオールと私 (通常版) [DVD]

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  • 発売日: 2015/12/02
  • メディア: DVD Audio

「アートを見るとリラックスして霊感も得られる」
(ラフ・シモンズの言葉)

老舗ブランド「クリスチャン・ディオール」のデザイナーに就任したラフ・シモンズ。8週間後には就任後、初のコレクションが控えていた。
これまで既存服のメンズファッションを手掛けてきたラフ。しかしディオールはフェミニンかつオートクチュールというまったく真逆の世界。
デザイナーの挑戦と、ディオールの心臓であるオートクチュールのアトリエ、そのアトリエで服を作る「魔法の手」を持つスタッフたち、モデル、様々な視点から、コレクションまでの日々を追うドキュメンタリー映画

へーとか思いながら見ていたらおもいがけず終盤で泣いてしまう私だった……。ラフが、本番直前になって怖くて震えながら泣く姿がリアルだった。でもその先に本当の泣きポイントはあったのだった。
服はとにかくすばらしく綺麗。(語彙力なさすぎ)
オートクチュールのアトリエを眺めつつ『パラダイス・キス』のジョージを思い出す私だった……。
ハリボーグミがとても食べたくなる映画。

本番の、本当に直前まで服が完成しないんだけど、そういう状態でも、イメージをキープし続けてショーをつくり上げていくのがすごい。

もうひとつみた。
マーシュ・ミーレー監督『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』

ニューヨーク五番街にある伝説的なデパートの実態を追う。バイヤー、販売員、アパレルブランドなど様々な視点から語られるのだが、私が見たかったのは店舗前のウィンドウディスプレイをつくる様子。
このデパートはとにかく何もかも普通の店とはスケールが違うし、動くお金が違いすぎて、どれも天上界の話のように思う。
出来上がったウィンドウはすばらしかった。
「所有欲が目覚めるディスプレイの美しさ」という言葉が出てくるのだが、まさに夢そそられる。アメリカンドリーム。視覚からわくわくさせる店。自分の仕事にも活かしたい。

映画を観つつ、ずっとそのままにしていた紙もの(手紙や、切り抜き)をファイリングしていた。

年賀状に「オレンジの本が見つからないよ」って書いたけどオレンジじゃなかったの、青いほうだったの。