「もっと若い服を着てみて」と言われたのは先週。お休みの日には着ますよ、と答えた。
本当はひざが出るほどのスカートも、明るい色の服も好き。
そんな休日用の服がクローゼットに眠っている。職場に着ていくには少し違う、ただこのところ誰かと会う予定も減って日の目をみていない。
今日は久しぶりに袖を通した。
服だけでも気分が明るくなるのは確かだ。職場へ着ていく服も変えてみれば、あらたな気持ちで仕事ができるのだろうか。でもそうなると日常と仕事の区別がつかなくなってしまう。
〈セーラー服を着た自分は格好悪くても良かった。Emilyに身を包んだ瞬間、私は高校への所属を断ち切れる。〉
(『spoon.2013年4月号』掲載・大石蘭「そんなお洋服ばっかり着てるとバカに見えるよ」から)
『spoon. April.2013 vol.93』
雑誌のテーマは「ロリータと装甲」。玉城ティナさんのロリータ写真がとても可愛い。
ファッション界の一端にたたずみ続けるロリータファッション。少女たちがロリータファッションを選ぶ理由のひとつには何かと戦うための「装甲」としての意味もあるのではと問いかける。
spoon.ってサブカル雑誌というイメージがあるけど、と思っていたら、どうやらロリータファッションがさまざまな文化に浸透している現象をうけてこの特集になったらしい。
装甲論を寄稿しているのが、大石蘭さんだ。
大石さんを知ったきっかけはインスタで、aiko・YUKI・椎名林檎・川瀬智子の四人の女性シンガソングライター分類図(?)を描いていたこと。
同じ時代を生きてる人なんだろうと思っていたら案の定ひとつしか歳が変わらないようだ。
そんな大石さんは東大を卒業し、ロリータを愛するライターとして現在も活躍中。
そして東京大学在学中に書いたのが、引用した上記のコラム。
普通の学生だった大石さんが、ロリータファッションに身を包み東大を受験、そして合格するまでのヒストリーが綴られている。
スポーツ選手が練習や試合のときに着るユニフォームみたいに、大石さんは「Emily Temple cute」の服に身を包んで受験勉強する。
そしてコラムのなかに、椎名林檎の名前が幾度となく出てくる。
大石さんも書いているが、椎名林檎は曲によってがらりと顔を変え、さまざまなファッションで登場してきた。歌にも服装にもそのときのストーリーと世界観がある。化粧映えする顔立ちのせいもあって彼女の本当の顔はいつまでもわからなくて、何人もの女の子の人生を演じているかのように思えた。
私が椎名林檎を知ったのは『本能』のナース姿。
この林檎ちゃんを見ていた母が「似合うねー」って言っていたのをよく覚えている。
そしてライブ『下克上エクスタシー』では血のついた包帯姿で、医者や患者の姿をしたバックバンドと歌っていて衝撃的だった。
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- アーティスト:椎名林檎
- 発売日: 2000/12/07
- メディア: DVD
話がそれるけど、川瀬智子(Tommy february6/Tommy heavenly6)も服装によって人格を変え、世界観を変えてくる。いつ見ても本当に可愛い。
自分の世界や物語を変える手段(装備)として、服は選ばれている。でも裏返せば私も「若い服を着てみて」の人も椎名林檎も、〈違う姿〉あるいは〈可愛い〉ということに、永遠にからめとられているのかもしれない。
おわり。この号は素敵だったので手に入れば読んでみてください。