本のある日記

本のある日記

日記・その時にあてはまる本・ことば・音楽。

作用反作用/くるしめる

月曜日
朝から夜までさんざんな日だった。私ぽんこつだった。でも笑顔は多かったからいっか。おやつもたくさん貰ったし、いっか。

火曜日
人の相談に乗っていて、かえって相手を泣かせる。それでも私は優しくしない。同調するの苦手だと思う、自分。
つかれたわ。相手もつかれたと思う。まあお互い、自分の決断にしたがえばいい。
仕事がいいところで終わってしまって、明日に持ち越した。生き急いで働くのはよくない。
夜すれ違った人と話していると、好きなの?と冗談で聞かれる。今日はやっぱりだめだめなのかもしれない。私もだめだし、みんなだめ。
夜を持て余している。することはたくさんあるのに。

こんなふうにざわめくのも仕事があるうちだし、みんなが慌ただしいときだけだろう。年末のころの、自分ひとりの静かな日々を想像する。あと少しがんばろー。

「自分だけのやり方で、じっくりと活字に触れるのが、僕の仕事です」
小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』

医大タイピストが、活字の管理人さん(活版印刷の活字を管理する人)に出逢って、惹かれてゆく話。文字からはじまる危険な想像。

小川洋子は変態。そしてグロテスク。でも綺麗。
以前から、この人の物語はいつも消毒液の匂いがする、と思っていた。医大の秘書室に務めていたという経歴をこの前知って、すごくぴったりだと思った。この物語もやっぱり、消毒液の匂いがする。
そして、とてもあやしい。短くて結末もあってないようなものだけど、恍惚に落ちていく幸福感で物語を打ち止めにするのは、悪くないのかもしれない。

引用した台詞だって本当は拒絶の言葉かもしれない。でも主人公は何も疑わず、気になって頭の中で相手への想像をふくらませていく。

一方的な想像は妄想だし、妄想は暴力だし、暴力はコミュニケーションじゃない。でも自分には安定剤。
だな、って自分に対しても他人に対しても思っていた今日だったので、タイムリーに読めてよかった。表紙も可愛い。