洗車のやりかたと、レッチリの歌だけ。
だけじゃないけど、安全に思い出せるのはそこだけ。You Tubeでも聴きながら作業しようかな、と思って、前に使っていた携帯電話の電源を入れた。触っていると、その当時届いていた言葉や着信がそのまま残っていて、それらを見ていると心がざわざわする。これは危険だなって思ってそっと電源を落とした。去って間もない思い出は、死んで間もない死体みたいですごく危ない。まださわれない。機種変更してて本当に良かった。
金曜日
職場の素敵なひとから、秘密を教えてもらう。それを想像するとすごく蠱惑的で良い。
「クリスマスだよ」と可愛い女の子に言われる。そっか、と返す。この日はあんまり元気じゃなかった(体調が)。
土曜日
練習おさめ。朝から16時まで!がんばるとすっきり終われるのでがんばる。年末年始、ゆっくりしたい。
日曜日
前の職場の同期の子(年下)が話しませんかと誘ってくれる。ときどき現状報告をし合ってよく笑う。もう3年くらいの付き合いになる。3年にもなるのに一度も安定したことないですね、私たち。と言われる。確かにそう。
自分にとって重要な誰かが、突然いなくなることが耐えられない、ということを話した。
どの記憶も嫌いになったわけじゃなくて、ただどれも、私のことがひとつも重要なことじゃないみたいにさっと消えてしまったことが嫌。だし、そういうのにもう疲れた。
夕方は洗車する。もしかしたら家族よりもこの車のほうが私のことを知っているかも。
話が飛ぶけど、昨日から掌に棘が刺さっていて、今日その(同期の)女の子のおうちに行って棘を抜いてもらった。それだけのことなんだけど、なんか不思議な気持ちになった。
「何かを好きになると、必ずそれがなくなってしまう。大切なものは、みんな消えてしまう。」
(佐藤多佳子『黄色い目の魚』より)
- 作者:多佳子, 佐藤
- 発売日: 2005/10/28
- メディア: 文庫