本のある日記

本のある日記

日記・その時にあてはまる本・ことば・音楽。

好きじゃなきゃ

1日
月初めだけどお休みをとっている。
スカートに紫の花が咲いている。
この日は朝から、こうしようという計画をたてて、その通り遂行する。大満足。
お昼をだいぶすぎて、コノジに寄ってみる。店長さんとミスチルの話になる。
ミスチルのある曲を聞くと、中学生のころ絶交した女の子のことを思い出します。と私が言うと、
「絶交ってこの世の中に本当にあるんだね」
と驚かれる。あるんです。

まるまる何もない日がひさしぶりだったから、ああこんな風に自分は過ごしてたんだなあと思い出しながら過ごした。

不安が心の奥にあるんだけど、お守りになるもので気を紛らわしてる。
帰宅してビーズの指輪つくったからこれもお守りにしようかな。紫の花の指輪。そういえばホーム画面も紫の花。

つかれたな、と言う人に、何が疲れたの?と聞いてみると、
「言葉にすると自分の中に残るし、聞かせた人にも嫌な思いを残すから言わない」と答えが返ってきた。はやく元気がでてきてほしい。

2日
たった一日休んだだけのはずなのに、一週間くらい休んでたみたいに新しい話が進んでいて取り残されたような気分だった。浦島太郎のような。
職場の人にも「なんか久々じゃない?」と言われる。
仲のいい人が来て、いつもより真面目な話をする。
ときどき本の話になる。『夜に駆ける』の小説版を読んだらしく、「ああいう話だったのか」と感想を言い合う。(※以下、物語の核心にふれます!)
ヒロインはメンヘラなのではとその人が言うので、私が
「でも男の子だってメンヘラだよ。だってもしあなたが彼なら、一緒に死んでくれないでしょう?」
と聞くと(これを聞く私もメンヘラのようだが)
「あれは死んだの?そういう夢を一緒に見てるってことだと思ってたけど」と返されて、そっか……と気づく。

(ねたばれ終わり)

「ところでYOASOBIの『アンコール』っていい歌じゃないですか?」
「ああ、最近聴いてる」
そんな話をした。あと、私の仕事場が好きと言ってもらってとても嬉しくなる。

そのあと少しばかり仕事が進む。楽しいことをしたくて色々考えてみる。いざしてみると、
「こういうの好きだね」と第三者から声をかけられる。こういうの好きだね、にネガティブさを感じてしまわなくもないけど、私はやめないわ……。

夕方、宇佐見りんの『推し、燃ゆ』を読む。一時間かからず読めてしまった。

〈ここで逃したらもう手に入らないかもしれない〉

宇佐見りん『推し、燃ゆ』

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

生活も勉強もアルバイトもままならない〈私〉には〈推し〉がいる。だがある日、〈推し〉がファンを殴ったという話で炎上しーー。

推しが、というところもあれなんだけど
片付けが出来ない私は〈私〉の同じような部屋の描写がひたすらつらかった。
私は普通と違うの、と叫びたい、そんな描写に苦しくなる。ただ姉の気持ちにもわかるし保健室の先生の気持ちもまあわかる。それぞれの立場にそれぞれ噛み合わないことがある感じをきちんと表しているのがいい。主人公には何らかの診断がおりていて、それをみんな理解してすり合わせているようで全然すり合っておらず、けっきょく壊れていくのも、かえってリアルというか。

あと、学校の描写がとてもいい。プールの空気とか保健室の空気とか、昼下がりの校舎の雰囲気とか、そこがとてもいい。

最後がもう少し長くあってほしかった。
ただ、読む前から芥川賞とるだろうなあと思ってたし読んだあともまあこれならとるだろうなあと思ったのだった。
文学としてもいいと思うし、なによりもはその感覚が、いまの時代に合っているような気がする。うまくはまっている。

この本、仲いい人も読むと言っていて、最近あの人と同じ本を多く読んでいることに気づく。
会話のときどきで本の話ができるのは楽しい。そして不思議な気持ちがする。誰かと、同じものを脳に入れる感覚が不思議。
『推し、燃ゆ』の〈私〉が〈推し〉を研究し解析するのも同じような感覚から来ているのかもしれない。
この気持ちについてはまた別の何かできちんと書き記しておきたい。

〈推しから発されたもの、呼吸も、視線も、あますことなく受け取りたい。座席でひとり胸いっぱいになった感覚を残しておきたい。覚えておきたい、その手掛かりとして写真や映像やグッズを買いたい。〉
(『推し、燃ゆ』より。)

私も、ある意味、本や音楽といった作品を感情を覚えておくための手掛かりにしている。


アンコール

アンコール

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255