本のある日記

本のある日記

日記・その時にあてはまる本・ことば・音楽。

所有権と占有権

15日
自分ぜんぜん仕事してないなあと思う、ところに、仲よしの人がやってきて、さらに何もしなくなる。あちらも同じだったらしい。不思議とのんびりした時間だった。
職場に絵を飾る機会があって、絵を眺めていると癒やされるし刺激も受ける。私もこうして何かを表現したい。

16日
上司にあたる人が、私の仕事を褒めてくれる。素直に嬉しい。夜はあたらしいお酒を買う。


17日
松屋に出かける。マッサマンカレー美味しかったです。この日はとても寒くて、だからこの冬の着納めかなあと思ってお気に入りのコートを着た。そしたら褒められた。
帰りに寄ったスーパーで、店員のおじさんが「所有権と占有権だよ」と言っていて、その言葉がなぜか耳に残った。

18日
仲のいい同僚から、嬉しいニュースを聞く。「良かったねえ」と口にしたとき、同じようにこの前「良かったじゃん」と言ってくれたこの人の気持ちがわかった気がした。でもその感情を言葉にしてあらわすのは難しいのよ。
ふたりでしばらく、コワーキングスペースのようにそれぞれ過ごしていると、「認められるっていいね」とその人がふいに言う。その意味を噛み砕きながら、なぜかとても眠くなる。
誰かとずっと一緒にいると、ぼーっとしてきて、自分の輪郭が溶けていくような気がしない?

19日
『花束みたいな恋をした』の、小説の冒頭部分だけを共有する。(読み合う)
そのあと一人で読む。
ずっとちゃんと話していなかった先輩と遭遇したので、「いつ私と話してくれますか?」と聞いてみる。自分の中にある甘えやめんどくささを、いい方向に使っていきたい。楽しい方向に。
夜は雑貨屋さんに少し立ち寄る。けっこう人が来ていて、ヤマダくんという学生とお話する。いい人だった。別れ際にハンドサイン出してくれたのが面白かった。
そしておみくじを引く。後日載せます。

帰宅後、珍しい人から連絡がくる。
とても嬉しい。
そしてなんだかとても切なくなる。
本当のことを言いたい、難しい。


(パンケーキ食べてるけど、した後の二人)
(『花束みたいな恋をした』より)

『花束みたいな恋をした ノベライズ』

ノベライズ 花束みたいな恋をした

ノベライズ 花束みたいな恋をした

あらすじ
偶然知り合い、恋人になった麦と絹の四年間。

サブカルかぶれが読んだら死にそうになる本だった。私たちの読んできた本、聴いてきた音楽、ふれてきたカルチャーは他のみんなも同じように愛していて、少しも特別なことじゃないし、私たちの恋愛も他の誰かと似通っていて少しも運命なんかじゃないんだよ、と言われてるかのようだった。
いえ、落ち着いてみるといい本だと思います。
絹は少しも悪いところがないのだが、蓋を開けると普通だったのは麦のほうだったね。

「女の子に花の名前を教わると、男の子はその花を見るたびに一生その子のことを思い出しちゃうんだって」
(同上より)

この台詞、適度に太宰治みたいでよかった。
入社はお風呂と同じ、入る前は面倒でも入れば良かったとなる、みたいな言葉もよかった。

この引用の赤色は薔薇色。


〈もっと話そうよ 目前の明日の事も/テレビ消して 私の事だけを見ていてよ〉
(『光』より)

宇多田ヒカル『光』

光

最近聴いたときに、昔とはまた違う気持ちで歌が頭の中に入ってきて驚いた。
愛の歌だと思っていたけど、それだけではなくて定まりきらないものへの願いを裏打ちするための歌なのかもしれないと感じた。
二人で生きていく歌ではなくて、君への不安を、これでもかというくらいの愛の言葉で支えようとするような歌なのかも。

ちなみにこの歌詞につけた青色は花色。