持田あきと演劇の歴史は古い。
先日、『ゴールデンラズベリー』を読んだ。
〈最低な時を受け入れて/腹に落とし込んでまた稽古に行く/僕はそういう俳優が好きだ〉
なんとなく今読もうかなーと思って二冊いっぺんに買った。
『ゴールデンラズベリー』というタイトルは、実在のゴールデンラズベリー賞からきている。
このタイトルには、たとえ最低な賞を貰ってもそれも受け止めてまた進んでいこうという思いがあるらしい。
モッチー絵がうまくなってた。
吉川塁の性格は好き。良いハンサム。
読んだ少しあとに文化庁メディア芸術祭の大賞とっててびびった。ラジー賞どころか最高の賞やんけ。
大人向けの作品を出すようになってから、社会的な評価はうなぎのぼりに上がってきたモッチーだけど、個人的には少女むけに書いてたころの雰囲気が好きだった。
(『ゴールデンラズベリー』も展開が予測できなくて面白かったよ)
持田あき作品にはときどきこうして芸能の世界が出てくる。彼女もまた芸能人(表現する人)だからだろうか。とにかく、持田あきと演劇の歴史は古い。およそ二十年以上前に遡る。
まず、モッチー初期の名作『グッド・バイ』である。
〈家族も友達も/「頑張ったね」とか「よくやったよ」と言ってあたしを慰めた/君だけが 「諦めるな」って言ってくれたよね/君だけが あたしの「次」を見てくれたよね〉
九重綾子は女優を目指す高校生。
綾子は中学生時代、同級生の慶太とお互いに夢を語り励まし合っていた。
高校の卒業式が終わり、同窓会をしようという三年前の約束通り、綾子は母校の中学校に向かう。そこには慶太がいて……。
『りぼん』の読書ページかなにかで、持田あき先生の『グッド・バイ』が大人気なんだって!という書き込みを見て、書店に買いに行ったのだった。
私が初めて読んだ、持田あき作品なのだ。
『グッド・バイ』は、四季の回想と合わせて進んでゆく物語の美しさとか、綾子と慶太のひたむきさとか、夢がすべて叶うわけじゃない現実味とか、それを含めてのあの終わり方なので、すごく胸がしめつけられる。
手放しで、感動したー!とかではなくて、すごい話だなあ、とじんわりとしみてくる感じ。
持田さんが漫画家になりたかった中学生のころをイメージして作った話らしい。
『グッド・バイ』を読んでから『蝶々くらべ』を読んで、さらにすごい話やな……と思ったのだった。
(余談だけど、この『グッド・バイ』に収録されている話はぜんぶ春の話、とモッチーが書いているのだけど、そこがとても好き。そして「さくら恋々きみのこと」が私はとても好き。」)
そして、『ブルー・リボン』である。
〈いつも私の夢を信じてくれたから/だから私も 自分を信じてこれたの〉
映画監督を目指す小夏、すでに人気俳優の葵。ふたりの夢はいつか『ブルー・リボン賞』をお互いに受賞して、賞状の青いリボンを交換すること。
『ブルー・リボン』は連載作品なのだが、前身の作品として読み切りの「ラストブルー」(『ブルー・リボン』収録)がある。
小夏と葵の過去の話。
これは持田さんが高校生のときに作ったらしい。お父さんがくれた『summer』(久石譲)を聴きながらそのイメージで描いたと、あとがきにある。
『ブルー・リボン』には『グッド・バイ』の九重綾子がそっと出てくる。ふたつの作品の共通点は、『夢』が大きなテーマであること。
『ブルー・リボン』は実在する最高の賞。『ゴールデンラズベリー』は実在する最低の賞。
何が言いたいかというと、『ゴールデンラズベリー』を読んで『ブルー・リボン』を思い出して、『グッドバイ』を思い出して、初期モッチーが大好きだったな、と思い出したのだった。
演劇とモッチーをテーマにブログ書き始めたけど、演劇じゃなくて夢がテーマなんだなとこれ書いてる途中で気づいた。
私は、『グッド・バイ』や『スイートソロウ』『おもいで金平糖』『蝶々くらべ』が好き。
『スイートソロウ』ってあんまり言われないけどいい話ばかりだと思う。演劇の話もときおり出てくるが、私は3巻の一番最後の話が好き。
夢(目標)といえば、『おもいで金平糖』のいちばんはじめの話のゴールテープのくだりを読むたび泣いてしまう。
つづき描いてくれないかなぁ。
終わります。