本のある日記

本のある日記

日記・その時にあてはまる本・ことば・音楽。

春が怖い

ふとした時にもう春だと気づいてしまうのだが、知らないふりを続けている。
この街に来て一年が経とうとしているのだ。

8日

朝、忘れ物をして(というか、肌着を一枚着るために)いったん家に戻る。再度職場に来ると、ある人がやって来る。この前、私のすすめた本を読んだ人。
「胸くそ悪かった」
その人はそのまま本の話をする。
私がすすめた本を読んでいて、私のことを思い出したのだと言う。どう答えていいかわからなくて、ただ暗い話ではあったので、「ごめんなさい」と一言謝ってみる。
でも、素直に感想を教えてくれた。
その人が帰ったあと、その短い話をもう一度読んだ。確かに私の性格と登場人物の性格に、とても近い部分がある。
たぶん、本当に素直に、この話を読んで私のことを思い出したんだろうなーと、思った。共感も同情も他の何もなく、ただそれなんだろうな。シンプルに。
そしてそれは、嬉しかった。

もう一人、別の先輩がやってきて、質問されるがあまり役に立てなかった。私だめでしたね、と謝ると、「だめじゃない」と返してくれる。

なんか、この職場、人はみんな優しいんだよな。私のことをきちんと見てくれる人もいて、それがちゃんとわかる。わかるように接してくれる。だから嬉しい。

先輩とそのあと並んで歩いていて、通路を歩いていたときに先輩が
「ここひさしぶりに通るわ」と言うので、
「去年の4月、5月は、ここを通っていつも泣いてました」
と言ってみる。もう一年が経ってしまうんだ、あれからも。

メールが届いている。あけてみると、「来年度もいるのでしょうか。100%いないのでしょうか?メールだからぶっちゃけて聞いてみました」というような内容だった。
わからない。
100%は、どちらもない。あるのかないのかわからない未来が怖い。明日は再検査の日でそれも怖い。不確かな未来があって、それがわかる日が来ることを知っているから、それがこれからの季節だから春が来るのが怖い。

年下の男の子が不機嫌にやって来る。なぜ元気がないのかと尋ねると、せつない話をしてくれる。
「もともとここから始まったんだ」
と、言っていた。ここは、私の働いている、ここ。なんだか胸が詰まるよ、と返す。
私もあのころはまだこの職場に慣れてなかったから、すごくいらいらしていて、彼に対してもそっけなかったはずだ。それがだんだん話せるようになって、今。
今こうして得たものがあるのに、なくなってしまったものもあるみたいだ。
この一年のうちに。

車の異音にも目を背けてきたが、今日直してもらった。もう限界かも、と整備士のお兄さんに言われて頭の中がまっしろになる。
「大事に乗って、次の車検のときに変えるのがいいかなと思いますね」
と、お兄さんが言う。
あと一年。一年後の、春の頃だ。
車にはかわいそうなことをしてしまった。
それでも、この車のことを私は大好きで、終わる日のことを考えるとつらくなる。
あと一年あるのなら、ゆっくりとお別れの心づもりができるかもしれない。だから大切にしよう。
お兄さんが車のことを、この子、と呼んでいたのがなんだか印象的だった。物に心をおもうのはこの人も同じなんだと思って。


〈幼い頃から抱いていた将来の夢は、「お店の人になること」だった。〉

『nice things. issue63/ GOOD STORES/扉を開けたいお店』

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ナイスシングスが休刊になっていることも知らず、復刊から先に知る私だった。
そしてもう取次にものらない。直売システムになっている。少しさみしい気持ち。



今日あまり仕事ができなくて、だめだった。


桜の季節

桜の季節

今日の帰りに聴いていた。志村さんは29歳で亡くなったんだなあ。


お題「#この1年の変化