本のある日記

本のある日記

日記・その時にあてはまる本・ことば・音楽。

人間とペンギンと檸檬と星

「ぼくは何をかくそう、SF研究会出身」
「あ、アイザック・アシモフ!」
「いや、違う。でもぼくは生き物が嫌い、ロボットが好き」
こんな会話を金曜日に、職場の先輩とした。私はロボットも生きているものも苦手。生き物では人間とペンギンと檸檬と星が好き。

今日は朝から、習っているものの練習に行く。後輩の指導をする。二ヶ月くらい会っていなかったのでどんなもんかなあと思っていたけど会うととても普通。
実家が近いので、お昼からいったん実家に戻る。先日、若い子たちが本を楽しそうに大切に読んでいる場面を見て、私も自分のために本をじっくり選びたいなあと思った。でも人が多いところに出るのが嫌で、夕方まで家で過ごす。

本屋さん(以外でも小さなお店ではそうなのだが)では、何か独特の「間合い」のようなものがある気がする。客同士で無言で道を空けたり、店員さんが近寄る気配を察したり、お互いに間をはかってうごきたたかっている。
会計をしていると店主さんから「相変わらず稼働は遅めなんですね」とさらりと言われる。色々な意味でえっ!となる。ここのところ土日は夕方になるとさっと人がはけるのだという。

探していた本がなくて、駅の大きな本屋さんにも立ち寄る。セレクトされた本を見るのもいいけど、こういう漫然とした売り場から自分にひっかかる何かを探すのも大切な作業だと思う。

私が探していたのはこれ。
CREA 6・7月合併号 偏愛のすすめ。』

CREA 2020年6月・7月合併号[雑誌]

CREA 2020年6月・7月合併号[雑誌]

  • 発売日: 2020/06/05
  • メディア: Kindle
合併号が出ると、もうじき休刊になるのかな…って勘ぐってしまうのやめたい。
みんなの好きなものだけでまるごと一冊になってて読んでいて楽しい。好きなものをなぜ好きなのかを丁寧に教えてくれる人もいればうまく説明できないという人もいて、そのちぐはぐさも、よき。

〈子どものころ、映画館で映画を見終わって外に出ると、いつもの街並みが不思議な作り物のように感じられた。〉
(中野翠CREA 6・7月合併号』連載「ふたり論点」より引用)
偏愛とあまり関係のないこのコラムにひっかかる私。こういう気持ちは「新しい日常」ではどうなるのかなあということが書かれてある。
偏愛特集では、あすなひろしが取りあげられていたことに感激。

装苑 2019年11月号 偏愛論。』

装苑 2019年 11月号 (雑誌)

装苑 2019年 11月号 (雑誌)

  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 雑誌


〈この記憶の神経衰弱は自分がどんな人間かを知るのに非常に有効で、〉

(eri『装苑 2019年11月号 偏愛論。』特集「偏愛論。」巻頭文より引用)

こっちを以前に買っていたので今回またひらいてみる。これはこれで濃いです。
自分を構成しているもの、あるいは深層にあるものが、ことばよりも先に偏った愛の矛先に滲んでいる。ということを思い知る二冊。

私が書くより装苑のHPを読んでもらった方がいいと思います。
http://soen.tokyo/sp/fashion/news/soen190924.html


いま聴いている曲。

今週のお題「外のことがわからない」

70分19秒

「先月の給与明細、見ますか」
(見ていいの?)
暑すぎて扇風機を出して、扇風機をはさんで会話する。大切な放送が私の仕事部屋だけ流れない午後は世界から忘れられた感じがあってよい。
「どうでもいいような話が大切なんですよ」とその人は言っていた。

許されるなら、こんなに暑いんだからここでかき氷でも振る舞って好きなだけインド映画でも流したい。仕事関係で話していた人が、午後から休みをとってミニシアターに行き、14時から22時まで映画を見続けて気が狂いそうだったと話してくれて面白かった。

いろいろな気持ちにブレーキがかかる。
昔、「わがままだよね」って言われた通り、自分は欲張りなのだと思う。

〈私は、少し幸福すぎるのかも知れない。〉
(太宰治『女生徒』より)

女生徒 (角川文庫)

女生徒 (角川文庫)

  • 作者:太宰 治
  • 発売日: 2009/05/22
  • メディア: 文庫

近くにいた年下の女の子に本って読む?と尋ねる。返事は「ぜんぜん!」

夜は久しぶりの習い事へ。木曜日や週末は練習があるからあまり自由がきかなくて、その代わり金曜日と月曜日がとても楽しみになるこの感覚が懐かしい。今年で歴が20年目になる。

幽霊のジレンマ

〈逃げる夢と帰れなくなる夢があり後者のときはいつもひとりだ〉
(岡野大嗣『たやすみなさい』より)

たやすみなさい (現代歌人シリーズ27)

たやすみなさい (現代歌人シリーズ27)

  • 作者:岡野大嗣
  • 発売日: 2019/10/13
  • メディア: 単行本

最近見た夢は、小豆島から帰れない夢。女の子に捕まってのがれられない夢。私は夢の中でいつ、もとの世界に帰れるのか。
この歌集は表紙がとにかくかわいい。実際に見るときらきらしてる。学校での描写がやけにリアルな気がするんだけど、私の持つ学校のイメージと噛み合うところがあるからなのかな。
学校は学校でも、校舎のなかで自分が存在しないスペースのことを詠んでいる歌(他人が授業を受けているであろう教室とか)が多くて、そのさりげないさびしさが好きかな。挿し絵の犬もかわいい。


〈みんな顔を伏せて わたしを心から愛してる生徒は手を挙げて〉
〈夏の飲みものの広告に海や空や空気の少しずつちがう青〉

(いずれも同上より引用)

職場で、なんか死んでるみたいに生きてるなって思う。まだ職場と自分がうまくとけあってなくて、ぬるぬるしてる。私も慣れてないし、みんなも私のことをまだまだ知らない。
未来の予定を話していると「この頃にはもういないかもしれないんだっけ?」と聞かれてはっと我にかえる。また別のときに別の人から年齢を尋ねられて、同い年であると判明して笑いあう。進んでいくのに進んではいけないような不思議な気持ちに時々なる。今の自分は人間じゃなくて、存在の確定しない幽霊のようだ。
〈いきいきと死んでゐるなり水中花〉
(櫂未知子の句集『蒙古斑』より)
そんな感じ。リミットまでに、人間になっておきたい。逆に言えば幽霊のあいだは、手を広げすぎない、深みに入りすぎない。

朝、紫陽花をみかけて、あれから一年経つのかとふと思って、これを書いている途中で紫陽花の思い出を共有する人から電話がかかってきた。

ゆっくりねじ巻くオルゴール

〈五月は好い月、花の月、芽の月、香の月、色の月、(略)/女の服のかろがろと/薄くなる月〉
(与謝野晶子「五月礼讃」より)

青空文庫で読みました。

今日から梅雨だと教えてもらう。雨のち晴れで、風が気持ちよかった。
今日で五月も、のんびりした時間も終わり。
明日からがんばろう。

ずっと連絡していない友人の後頭部だけ夢に出てきた。なぜ後頭部なのか。

車検に出してしまったので、愛車としばしのお別れ(一晩)。なんだか寂しい。

またもや赤い部屋

晴れた真昼、走ってお店の中に入ると、赤い壁(こんな色)の六畳くらいの小部屋が私を待っている。部屋の真ん中には白いテーブルがあり、青色(こんな色)のプリンターが乗せられていて、ただそれだけしか店内にない。店主さんは外出しているらしい。
内装は全然違うけど、頭の中で、この店はあの店(現実にあるお店)だなって思っている。知らない男性のお客さんが二人やってくる。少し話す。
……お店からでないまま目が覚める。

今日みた夢。
この前みた夢も赤が基調の部屋だった。私はどちらの空間からも出られなかった。
でも別に悪夢ではなかったけど。

相変わらず本の断捨離してる。ずっとしてる。本って何なんだろう?哲学になってくる。
永田カビさんの本を読んでいるとお酒が飲みたくなり、

サングリアをのむ。(おうちで)

〈夜の渋谷の街キラキラに輝いて〉
(Shiggy Jr.「サングリア」より)

サングリア

サングリア

  • Shiggy Jr.
  • J-Pop
  • ¥255
よーるのしぶやーのまちきらーきらー、に、かがやいておいーしかったねーっていってー
の、ねーっ、の歌い方が好き。本当に女の子がそう喋ってるみたい。

そんなふうに夜起きているうちに、だんだん怖くなってくるから寝ます。


今週のお題「好きなお店」