『ソロモンの指環』に、アクアリウムを作るなら春が良いと書いてあった。
生物のいないアクアリウムを作りたい。生物はこわい。私のアクアリウムにいてほしいのは土と植物だけ。それは、ただ水が腐っていくだけの世界になってしまうのだろうか?
私はしがない本好きなので、勉強も何も出来ない。ただ、過去に。医学部を目指していた天才肌の男の子と唯一わかりあえた話題があった。
大江健三郎の『死者の奢り』である。
「これやばくない?」
「やばい」
グロテスクなものは苦手な私だが、『死者の奢り』はどこか耽美的な香りもあるのでなんとか読めたし好きだった。(しかしとんでもない話だとは思った。)(しかし女の子はどこか魅力的だった。)
彼は医学部を目指すにあたり、『死者の奢り』を読んだらしい。目指すべき世界とは真逆を行ってるだろ。と彼が思ったかどうかはわからなかったのだが、ただ、私も彼も本当にその本を読んだんだな、ということだけはお互いに分かりあった。交わることのない天才と共通の衝撃ができたことは、何となく嬉しかった。
ちなみに二話目(飼育)のほうが気持ち悪くて最後まで読めなかった。村上龍の本を読んだときと同じ気持ちになった。
その人のことを思い出す日だった……というより、その人と再会したのが今日だった。
なんとなく、彼が外科医であればいいのにな、と思う。ためらいなく皮膚を切って、迷いなく内臓にふれてほしい。
最近の、生物学的な二冊。
そんなことはさておいて、たいへん忙しくて…心を失いそう。早く落ち着きたい。何も終わらないし何もかも迫ってくる。