本のある日記

本のある日記

日記・その時にあてはまる本・ことば・音楽。

五日間の休暇(後編)

〈今はとて宿かれぬとも馴れ来つる真木の柱はわれを忘るな〉

これは源氏物語の「真木柱」に出てくる歌。
私がいなくなっても真木柱は私のことを忘れないでね、という歌。
ここで歌われる真木柱は、単純に柱だけの意味ではなく、おそらく人のことでもあるのだが、でも自分がずっともたれていた家の柱に宛てた、いとしさでもあると思っている。

私は、もの言わぬ物に心を見る感覚が好きなんですよね。

本も話しかけてくると思っているし、車も生きていると思っている。その感覚は危険だと言われるときもあるけど、でも私はもの言わぬ物たちが好き。ときに、感情をあらわにするものよりも。


〈山の辺に茂る草叢から、ふと私に呼びかける花があった。〉
(志村ふくみ『語りかける花』より)

志村ふくみ『語りかける花』

語りかける花 (ちくま文庫)

語りかける花 (ちくま文庫)

染織家のエッセイ。まったくこの方のことを知らずに、タイトルに惹かれて読んだ。
染物の染料となる草木や自然を見つめて、ときにそれらと語り合った日々の出来事を書いている。花は生きているけど言葉を発しない、けれど語りかけてくる、感情のかわりに匂いや色や佇まいが、目の前に鮮烈にあらわれる。
植物以外にも、絵、色彩、四季、和歌、仏像、志村さんの目に映るさまざまなものが彼女にかたりかけ、彼女を呼び、不思議な絆を生む。

すごく良かった。
私にとって、語りかけてくるものたちは、書棚に並んだ本、ぼろぼろになった愛車、自室のぬいぐるみ、練習の用具。
もっと感性のアンテナ張っていきたい。


〈夕刻、もうこれまでと思い切って機を下りようとしたら、ふと呼びとめられる気がした。「早く帰ってきて、きっと」子供に呼びとめられたようで胸が騒いだ。機からこんな風に声をかけられたのははじめてだ。冬中、二人っきりだったものね。〉
(『語りかける花』収録「能見日記」より)

志村さんの色彩論も面白かった。
もの言わぬ物に、心を見るのは、でもお茶の世界でもあるもんね。けっして不思議なことではないと思う。

5日
練習、片道1時間くらいかかるので、昼までの練習でも片付けてご飯食べて帰宅すると結局14時を超えていて一日終わった感じがするんだよなあ。

練習のあと、そっと志村ふくみさんの本を読んで、うちに帰ってお風呂に入って、明日からの心づもりをして、私の五日間はおわり。



今週のお題「おうち時間2021」

五日間の休暇(前編)

1日
朝は練習。体力の回復を感じる。
ミスドを食べたくなってドーナツ選んでいると、前の職場の人と再会した。
夕方、海を見に行くはずだったが天気が荒れていてやめにする。雑貨屋さんに寄るとヤマダ君と店長さんがいて、グミをもらったのでガムでお返しした。

2日
最近アルバム(データではなくリアル)を作っていて、朝は写真の整理をする。なんだかいい感じ。
家族に荷物を送る。
午後は練習。疲れるけど今日はやる気がある、珍しい。先生、御年87歳らしくてすごい。
夜は思い立って、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観に行った。
ひとりで映画にいくのはとても久しぶりのことだった。観る前はなんだか不安で怖かったけど、思いがけず良かった。アスカに関する場面で、何度かぐっとくるものがあった。
宇多田ヒカルは天才。

宇多田ヒカル『One Last Kiss』

初めてこのPVをフルで見たとき、ドキドキした。劇場で流れてきた瞬間はもっとドキドキした。

3日
人のいないところへ出かける。
出かける前はいつも怖い。なにか起きたりしないかとか、気まずくなったり辛くなったりさせたりしないかとか。
でも実際はそんなことなくて、それがかえって怖いけど、嬉しくてそれでかまわないんだって受け止められるようにもなってきた。

4日
朝からお風呂に浸かる。すごく気持ちがいい。
花や緑をたくさん見る。
人のいないところでソフトクリームなど食べる。
帰るとき、まったく辛くないけど、とっても寂しくなる。

本を読んでいて、本を読むとき自分はひとりきりの世界に居たがるものだと思っていたけど、それだけでもないのではと気づく。
何かを待っているとき、誰かを待っているときにも本をそっと開いている。
誰かがそばにいるときも、本を開くときがある。それはみんなの前ではなくて、家族くらい心を許した人なんだと思う。いままでに3人くらいいた。

いつもどこかで、本を閉じたときにはその先に誰かが居るのを知っているし、その人のことも思いながら本を読んでいるのかもしれないと、この日思った。

あと一日練習、そのあとの予定は未定。

きれいごとにしたがる

大切な話は金曜日にするのが良い。
そして真昼に。そうすると午後からのいろんなことで気が紛れるから。

29日
祝日。朝は練習。ふつうにこなせて、体力の回復をかんじる。帰ってからお昼寝して、石の民俗資料館へ出かける。うにのれおなさんの展示を見る。
病んでいてモノクロの気分だったのが、絵を見ることであざやかに色づいていく気がしました。目の覚めるような水色の絵が好きだった。
うにのさんを知ったころは自分がとても悩んでいたころで、それもなんだか思い出した。

外はとめどない雨。ここに来るときはだいたいこんな天気。

夜はそっと出かけて、黒猫を見る。路地を走る。服を見て、カルディに寄って帰る。
人の書いた文章を読ませてもらって、たんたんとした中にもその人の意思があらわれる部分があって、たまらなくとうとい気持ちになる。
怖くなってきたとき、怖いと素直に告げてみる。


30日
ひさしぶりに朝から出勤できた、よかった。
文章をもらう。とても嬉しくて、少し怖い。自分でつくる言葉のような、逃げ道がないとわかっているから。

お客さんが来て話をしてくれる。私は何も解決の手立てを示してあげられなかったけど、
「誰かと話したい気分だったから」それでいいんだよ。って言ってくれる。

大切な話をしたいと、前の日から、もっと前から本当はずっと思っていた。できなかった理由から目をそらしていたけど、このままでもだめだった。素直な気持ちを伝えた。
どうしていつも、溢れるまでわからないんだろう。水が零れてしまってから、意味もなく謝ってばかりいるんだろう?

〈どうしたら/いいのでしょうか/ごめんなさい/こんなこと/ごめんなさい/こんなことばかりで〉

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これは小さなお店で(+106)買ったカード。
「無色」というところの「若林」さんがつくったものらしい。
https://www.musyoku-book.com/
↑ここから、「いつかの若林より」の7月までさかのぼるとこのカードの思い出がでてくる。

可愛い喫茶の背景に、消えそうにごめんなさいの文字が書かれてある。
HPを見てはじめてこの作品ができた背景、言葉の後ろにある記憶を知った。

ほんとうはずっと前に紹介したくて、できないまま眠っていた。

今日あなたにごめんなさいと思ったあとで、この言葉をはっと思い出した。
まだ整理できない言葉が自分の中にいくつもある。
いつも同じことを繰り返して、傷つけてばかりでごめん。

「結婚してますか?」と聞かれる。
「恋人いますか?」ではなく結婚してますか?と聞かれる年齢になったんだなあとしみじみした。してません。

人と話していると気が紛れる。
帰りがけ、年下の女の子が手を振ってくれて、車を止めてさようならした。


連休はなにか、言葉を綴りたい。



サナギ

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  • スガ シカオ
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春風邪・新学期

25日
朝は練習(見るだけ)。メンバーも増えてこれから楽しみ。とか、思っちゃう。イヤイヤ期なのに。
調子が戻らなくて帰ってからすやすや寝る。夕方に目覚めて少し出かける。

26日
朝は病院に行く。風邪ですね、と言われる。
薬を貰って遅れて出勤する。夕方になると体調が悪くなってきて、すぐ帰る。ムカデをみんなで退治した。ごめんムカデ。

27日
この日も遅れて出勤。6時間勤務がちょうどいいよね、しかし体調がすぐれなくてさらに早く帰る。帰って寝ていると、どうやら熱が出てきたようだ。まずい。

28日
ついに半日休む。休みの融通がきくほど幸せなことはない。職場に感謝。出勤する意味あるのか?とは思うが、人と話しているといろいろ気が紛れる。心配をかけた人もいて申し訳ない。
小雨が降ってきて、なんとなく夏の近さを感じる。涼しくて気持ちいい。
昨日よりだいぶ調子は良くなって、夕方になっても平気。小説を人に見せてしまう。そしてなぜか続きを書き始めてしまう。いろいろ大丈夫かなあ。胸がざわざわする。
夜は人と食べたのだが、かつ丼を食べよう、と言われてテイクアウトしてみる。病み上がりへの配慮ゼロでうける。
でも話していると楽しい。しかし、夜が更けるにつれてしんどくなってきたので終わりです。

高屋奈月
フルーツバスケット another(1)』

風邪ひきで寝込んでいるとき、なぜかフルーツバスケットを読み返していたのだった。
という話をしたら、つづきを貸してもらえたのだった。
新学期の話なので、今の時期に読めたのがちょうどいいなと思った。
高屋奈月作品の、序盤にトラウマが叩きつけてくる雰囲気が少しつらいのだが、でもかゆいところに手が届くというか、すごく繊細な、自分でも言葉にできないようなささやかなところに触れて傷ついたり救われたりする感じが、ああこれがフルーツバスケットだなあと懐かしくなった。そしてこの主人公(三笘ちゃん)も熱出してた。
ちなみに旧作では紫呉さんが好きです。

Chime

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  • 大塚 愛
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ずっと燃えている

21日
前日、職場用のサンダルを新しくした。
New Balance!うまくバランスとってゆきたい。
そのまま仕事部屋の大掃除をする。埃を吸ったのか、のどが調子悪くて仕方ない。
ここを病院の診察室みたいにしたい。
人がくれた落書きやメモを引き出しの横に貼ってみる。そう、前の職場ではこんな感じだったなあと懐かしくなった。 

「なんか今日は落ち着いとるなあ」と上司に言われる。見かけがですか?と聞くと、雰囲気らしい。嵐なんだけどな。

年下の女の子の悩みを聞く。
「相手が変わってしまったわけじゃなくて、同時並行で進められないだけで、その用事が終わったら帰ってくるよ」と、言ってみる。人間、5回くらいまでは戻ってくるよね。どこかへ行っても。

いつもだったら、することをしない。なんだか疲れていた。イヤイヤ期なのかもしれない。
練習に行きたくない。練習する意味を見失っている。本質は分かってるつもりだけど、練習したってしてない人とおんなじだし、みんな好き勝手にしてるんだから私だって好き勝手にしたいなって思う。
そうじゃないってわかっているんだけど、そんなふうに思ってしまう。

「僕たちはギブアンドテイク。だけどやられたらやり返す」と職場の人が話している。
そうだ私だってやり返しちゃえばいいんだ。と片隅で思った。


22日
大掃除を続ける。
「元気ですね」と言われてむっとしてしまった。こころ狭い。
仕事部屋に新たな書き置きが残されていた。なんだか懐かしくなった。そう、前もこんなことあったよ。
そんなただの日常なんだけど、心が乱れる。
夜は思いがけず、がっつり練習してしまう。がっつりするのが好きなんだと思う。
後輩がやってきて、嬉しい報告を聞く。
そして、ご飯に誘ってくれていた先輩の約束をお断りしてしまう。つらい。

23日
のどがとても調子悪い。まずい。
仕事はつつがなく終わって、他人との交流もいい感じ。年上でも年下でも声をかけてくれる人がたくさんいてくれて幸せ。
ただやはり、心は乱れる。咳が出る。まずいなあ。
だから?と聞かれた。
だから、と思うことはあっても、だから?と聞かれたのは初めてで、答えられなかった。

夜に電話していた相手がちょっと冷たくて、でもその無意識の冷たさがあるから保たれているバランスがあるんだと思った。

ところである人の文章に私が出てきてるよ、と職場の人が教えてくれた。書いてある気持ちは嘘かもしれない、と疑ってしまう自分もいるんだけど、嬉しかった。

異動した先輩から連絡がくる。ずっと私も連絡しようと思ってた、ほんとに。

24日
冷めるようなことばかり言ってごめん。
と言われた。
「ずっと燃えてる」と答えた。
私は私なりに、少しずつ前向きになっているつもりだ。
しかし、のどの調子が治らない。

午前は練習(を見るだけ)。見ているとやりたくなる。夕方は公園で少しだけ散歩をした。
夜はひさしぶりに涙が出た。

HERO『堀さんと宮村くん』

あるきっかけがあり、アニメを観た。(ホリミヤではなく堀さんと宮村くんのほう。)
普通にいい話だった。
「私たちは他人には見せない時間の共有者になった」という言葉が印象的だったが、どうやらそれは『ホリミヤ』のアニメのほうらしい。でも私は『堀さんと〜』のほうがスキ。