金曜日。朝から胃がぐらぐらする。色々不安に思いすぎている。
パソコンにメールの返信が来ている。私がとある作家を好きになったきっかけは、二人の尊敬する人の影響だと送った、それに対する返信。
[人生においてそういうメンターがいるのは羨ましい限りです。]
そう言われるとそう、幸福だと思う。
本棚から、件のメンターに貰った本を取り出して開いた。
何もできないときは何もかもしようとしない。
〈でもそのときの僕にはわかっていなかったのだ。自分がいつか誰かを、とりかえしがつかないくらい深く傷つけるかもしれないということが。人間というのはある場合には、その人間が存在しているというだけで誰かを傷つけてしまうことになるのだ。〉
- 作者:村上 春樹
- 発売日: 1995/10/04
- メディア: 文庫
あらすじ
僕は同級生の「イズミ」と交際していたが、あることからイズミを裏切り深く傷つけてしまう。
その後、僕は孤独な青年期を経て家庭を持ち、同時に自分の「店」を経営し始める。
順調な生活を送っていた僕の前に、突然、ずっと忘れられなかったひとりの女性が現れる……。
仕事のことで悩んでいたとき(いつも悩んでいるけど)に貰った本。
なんでこの本なんだろう、と思っていたけど、読むと仕事のこと、働くということについて意識させられる。決してお仕事ストーリーではないけど、読んでいると仕事に真摯に取り組みたいと感じるし、少し楽しい。
〈店には落ち着くべき時期と、変化するべき時期とがある。〉
とか
「ここはお店なんだ。お客はみんな来たいときに来て、帰りたいときに帰っていくんだよ。僕はただ人が来るのを待っているだけなんだ」
(どちらの引用も、同小説より)
っていうふたつの場面がとても好き。いい。お店というか、人を迎え入れる場所はそうだなと思う。
私はこのふたつの場面を読むと仕事がんばろう、という気持ちになる。
ただし全体として漂う雰囲気は苦しいかもしれない。仕事だけじゃなくて、自分のまわりにある現実や孤独、家族、家族や恋人ではないけれど強く惹かれてしまう人の存在など、さまざまな問題がこの話のなかには内包されている。
ひとりっ子もひとつのキーワードになっている。私もひとりっ子なので、シンパシー。
貰って二年くらい読めていなかったのだが、今のタイミングでこの本を読めたから、今の私は少し楽になったし、いいと思う。
〈だからあなたは私を全部取るか、それとも私を取らないか、そのどちらかしかないの。〉
(同小説より)
ここも、すごく胸がぎゅっとなる。
いいとこ取りをさせちゃ駄目だとわかっているけど、こうして告げる強さはなかなか持てないだろう。だからこそ心に残る言葉。