ひとりでこっそり海をみにいく。
というか、ひとりで迷子になっていた先に海がひらけていたのだ。
ガイドブックに載っていないその海は青がすごくきれいだった。
海はとてもいい。やっぱり香川がいい。瀬戸内海の狭さも、海のすぐ反対側が森なのも、まわりの街が小さいのも空に電線がないのもめちゃくちゃいい。
一緒に海をみにいこうね、と約束したあの人たち元気かな。今は海を目的にしてはいけないから、すぐ立ちさらなければいけなくて、シーグラスは見つけられなかった。
引っ越ししなければこの海も知らなかったのだろうなー。海が近くなったことが嬉しい。
実家に戻る。片付けをしながらテレビのリモコンに手が当たって、テレビの電源を入れてしまう。怖かったのはテレビが点いた瞬間に
「電源を消したり、……すると、……居場所を把握することができなくなります」
というようなナレーションが流れてきたこと。タイミングよすぎるよ。
帰りに少しだけ本屋さんに寄る。店主さんが紹介してくれたお兄さんとちょっとお話しする。
名前を聞かれて、教えると、お兄さんは私の名前をはきはきした口調で声に出していた。小説書くんですか、とも聞かれる。
私は基本的に名前を隠したい、やってることも隠したいタイプなので、この人はそうじゃないんだろうなあとぼんやり思った。お兄さんに教えられてくるりの詩集があることを知る。
ポーの詩集を買った。
日曜日の夜がくると、憂鬱になるほどには、今の職場もまだ苦手。
〈私、眠るという行為が怖いんですね。〉
(aiko『別冊カドカワ 総力特集aiko』p47より)
私もときどき寝るのが怖くて、そんな話をこの前美容師さんとしたのだった。
「何が怖いの?」って聞かれたけど、何が怖いのか自分でもよくわからない。後ろからゆっくり恐ろしさがくる。
〈だから寝るのをできるだけ我慢して、結果、夜更かしちゃうっていう。〉
(同インタビューより)
これは『染まる夢』という曲について答えているところなんだけど、好きな歌の背景も好きだと思えるものでなんだか嬉しい。
〈「いろんなことが全部、何もかも。翌朝のバイトとか人込みとか、することがない平日や、眠る前とか」/「怖いとき、どうするんですか」/「死んだみたいに目をつむってじっと我慢してる。そうすれば、いつかは通りすぎるから」/「なんで怖いって言わないんですか?」〉
(島本理生『リトル・バイ・リトル』より)
- 作者:島本 理生
- 発売日: 2018/05/25
- メディア: 文庫
昔は単純にいい話だなって思ってただけだったけれど、今は「なんで怖いって言わないんですか?」のところで、そりゃあ君みたいな人がいれば言うよ、と思ってしまって少し寂しい。
世界の全体像がはっきりと明かされるわけでも変わるわけでもないけど、じっくり優しさがしみていく感じは今読んでも好きだと思う。
今日聴いたのはこれ。
クボタカイ『ベッドタイムキャンディー2号』
今週のお題「遠くへ行きたい」