19日
雨の季節になると紫陽花が咲くのをじっと待っている。二年前から。雨は振り続けるが、まだ紫陽花は咲かない。
洗濯をしていると電話がかかってきた。
二十代最後の電話の相手はあなた。
20日
誕生日です。普通の気持ちだったんだけど、朝出勤するとプレゼントが置かれていたり、担々麺(私の好物)と小さなケーキをいただいたり、ビスコもらったり、遠隔から苺をもらったり、おめでとうってメッセージが届いたり、自分のことを覚えていてくれて祝ってくれる人がこんなにいるのかと、じーんとした。
母親が、『装苑』の表紙にスズランの写真を乗せた画像を送ってきて、花言葉をプレゼントしてくれた。この人なかなかやるな。すごく嬉しかった。
ありがとうございました、みそじもがんばります。
そして新しい本が届く。本はとてもいい。わくわくする。
21日
過去の日記を読み返していて、病んでいるときはやはり病んでいたんだなあと思った。
本屋のときは毎日楽しいって書いていた。つらかったけど、仕事そのものはとても楽しかったんだろう。
仕事の合間に色々な本を見ていて感じたのが、本の世界ってすごく自由なんだということ。みんなこんなにも自由に綴っているのだから、私だってひとつくらい小説を書いて世に出せばよかった。
夕方、ルヌガンガとYOMSとサンリンシャに行く。各店長さんお元気そうでなにより。
本をたくさん買う。ルヌガンガのなかむらさん、ヨムスのさいとうさんに、最近のたくらみを話してみると
「いいですね」
「なにか始めていきましょう」
とそれぞれ言ってくれる。
市美(高松市立美術館)に立ち寄ろうとすると、月末まで休館とのこと。ミッフィーが館内からこちらを見ていたのが印象的だった。
夜はケーキとワインと鶏をごちそうになる。
生きててよかった。
22日
梅雨の合間の晴れ。公園でも行こうかとしたのだが、公園は公園でも墓地公園だった。でも景色が良い。そして、紫陽花が咲いているのを見つけた。とても嬉しい。
ぎこちなかった自分がいつのまにか自然と過ごせていること、意識せずやわらかく接していることに気がついた。けれど、それを伝えた人は私より先に気づいていたらしい。「思ってた」と言われた。
夜は茄子の肉味噌炒めをつくる。
23日
本当は髪を切りたいけれど予約が取れなかった。とりあえず日記をつける。日記を書くことは心の硯をすること。
〈白い紙を前にした詩人や作家は、創作意欲を駆り立てられるか、不安に襲われて沈黙するかのどちらかだ。(中略)/青い空を汚し、傷つけたくなるのは、それを正直に受け止めてしまうからだろう。〉
(堀江敏幸『坂を見あげて』収録「負の座標に向かって」より)
- 作者:堀江 敏幸
- 発売日: 2018/02/07
- メディア: 単行本
エッセイなのか小説なのかわからない、散文集。たぶん、一篇ごとに月が進んでいくんだと思う。これは5月のことばたち。
〈空が救われたのか、私が救われたのか、x軸はゆっくりと溶け出して、ふたたび青の支配が始まる。五月の空は、まだ頭上にある。〉
堀江敏幸の綴る言葉はよくわかんないからもっとわかりやすく書いてほしいなって思うときもあるのだが、わかんないからいいんでしょうね。
今週のお題「雨の日の過ごし方」