真綿ではなく、誰かの手でもなく、見えない紐でゆるやかに縛られるような感覚がする。今の職場にいると。
なんにも誰のせいでもなく、しかし苦しくなる。悪いのが誰なのか私にはわかっている。
話は変わって金曜日に「背徳会」をしました。それはただただ、職場でお菓子を食べるだけなのですが、同席してくれた子がそう名付けてくれました。紅茶でも出せたら良かったですねと言うと、「そこまでいくと背徳ではなく、罪です!」と言われた。背徳会はまた催される予定。初回の活動はエクレアを食べながら高校時代の話などをした。
そう、何も私に害をもたらさない。楽しいことはたくさん起きている。けれど身動きが取れなくなる感覚も日々ある。誰が主犯か、それは自分。
〈「ひとりになりたいなぁ。」/思わず独り言を言った。ひとりになりたい、そんなこと思っちゃいけない。でも、心底ひとりになりたかった。〉
(西加奈子『おまじない』収録「孫係」より)
西加奈子『おまじない』
- 作者:西 加奈子
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: 単行本
言葉・家族・お酒・妊娠・好きな人・苺・など、「何か」「誰か」「言葉」「身体」など、さまざまなものに「囚われてしまった」人たちの短編集。登場人物たちは何かしらの存在に「おまじない」のように心(の一部)と、生活を支配されています。統一されていないようで、「おまじない」という点で共通している物語たち。
作中に「おまじないはお前を呪ってへんねん」という台詞があるのですが、この本に出てくる人たち、そして私たちも、知らず知らずのうちに、自分の琴線にふれる何かに縛られていたことに気がつくのでした。呪ってないと言いつつも、それらはまるで呪いのよう。
私は、自らを苦しめる言葉を燃やしたいと願う女の子の話「燃やす」と、妊娠が発覚してぐるんぐるんしてる女の人の話「マタニティ」が好きです。
だいたいどの話もシリアスなのに、「マタニティ」の中でひとり浮き浮きしている田端くんの存在が光ってる。こういう西加奈子のほうが好き。
私の人生にも色々な「おまじない」がある。やってはいけない、存在してはいけない「おまじない」も。
悪いことをしたときは罰を与えます。だから土曜日に与えました。
明日はあかるいことを書こう!